こんにちは!SCSKのようこです。
今回は、改めてWi-Fi基礎知識をおさらいしようということで、チャンネル設計の際におさえておきたいDFS(Dynamic Frequency Selection)について紹介していきます!
目次
1.DFSとは何か
2.DFSの影響を受けていることはどうやって確認できる?
3.DFSを回避するための選択肢
4.Fast DFS機能搭載のヤマハAPはこれだ!
5.5GHz帯を賢く使って快適なWi-Fi環境を!
1.DFSとは何か
DFS(Dynamic Frequency Selection)とは、5GHz帯の無線LANで、W53(52ch~64ch)およびW56(100ch~144ch)のチャンネルを使用している場合、気象・航空レーダー波等を検出した際に使用できるチャンネルを調べて移動する一連の処理のことです。それには最短でも60秒間かかるため、その間Wi-Fi利用が停止してしまいます。
W52 | 36,40,44,48ch |
W53 | 52,56,60,64ch |
W56 | 100,104,108,112,116,120,124,128,132,136,140,144ch |
なぜ、Wi-Fi利用が遮られてしまうの?
無線LANの5GHz帯はW52、W53、W56の3つのチャンネルグループに分かれています(前項の表を参照)。そのうち、W53は気象レーダー波、W56は他のレーダー波と共有しています。電波には干渉がつきものですが、このような社会的に重要なシステムのレーダー波は途切れると重大な不具合に発展する可能性があるため、Wi-Fiより優先されます。そのため、W53またはW56を使用中にレーダー信号が検出された場合、その帯域を開け放して干渉しないチャンネルに動的に切り替えられるのです。

DFSの仕組み。なぜ1分以上かかるの?
まず、Wi-Fiの電波を吹いている無線LANアクセスポイントでは、使用中の5GHz帯のチャンネルにレーダー信号がないか、常時検知できる状態で稼働しています。そこでレーダー波が検知された場合、次のような動きがとられます。
- 10秒以内に使用中チャンネルで送波を停止する
- W53、W56帯を遷移先で利用する場合、遷移先のチャンネルを利用可能か60秒間スキャンする
- 利用可能なチャンネルに遷移する
上記手順の2.の遷移先チャネルのスキャンに60秒かかるため、DFSは最低でも60秒かかってしまうというわけです。ちなみに、DFSが動作したチャンネルはその後30分間利用停止となります。
これらが理由で、無線LANで5GHz帯を利用する上でDFSは懸案事項として避けて通れないのです。
2.DFSの影響を受けていることはどうやって確認できる?
以前、SCSK ネットワークプロダクト第一部の公式Twitterで、DFSに困ったことがあるか、アンケートをさせていただきました。結果としては「ない」方が「ある」方をやや上回っていますが、一方で、なんとなくWi-Fiの調子が悪いけれど、それがDFSの影響であることに気づいていない方もいらっしゃるのではないかとも思いました。
そもそも、DFSが起きると端末側では「Wi-Fiに繋がっているはずなのに通信ができない」という状況になります。一度はご経験がありませんか?
DFSは定期的にレーダー波が派生する、気象観測ドームや空港、基地の近くなどで多く発生しやすいと言われていますが、飛行機や船の航路によって、それらの拠点との距離とは関係なくどこでも発生する可能性があります。そこで、実際にDFSの影響を受けていることをどこで確認するか、ヤマハ 無線LANアクセスポイント WLXシリーズ のケースで紹介します。
ヤマハAP WLXシリーズは、ログで確認できる!
ヤマハ WLXシリーズの通常のDFS動作では以下のようなログが記録され、使用中チャンネルの30分間の停止や、指定範囲での再選択が行われます。
DFSに関するログメッセージのサンプル
[80211-DFS] <0303> Radar detected on {CHANNEL} CH. Disabled {CHANNEL} CH for 30 min.
[80211-DFS] <0304> Channel is changed to {CHANNEL} CH.
※{CHANNEL} には該当のチャンネル番号が入ります。例えばW53の52chの場合、以下の様になります。
[80211-DFS] <0303> Radar detected on 52 CH. isabled 52 CH for 30 min
→レーダーを検出した。52chは30分間使用禁止となった。
DFS関連のログはinfoレベルで出力されますので、初期設定から変更する必要はありません。上記の他にもDFSに関するログメッセージがあります。詳細は、ログメッセージリファレンスで公開しています。
参考:http://www.rtpro.yamaha.co.jp/AP/docs/wlx222/log_reference.html#03 (WLX222 技術資料)
WLXシリーズのログの確認方法
ヤマハ WLXシリーズのログは以下の3つの方法で取得が可能です。
- Web GUIからreportファイルを出力
画面左のメニュータブ 保守>レポート出力 - Web GUIでログ(Syslog)を画面出力
画面左のメニュータブ 保守>ログ(Syslog)※ファイル出力も可能 - コンソールやtelnetでCLIに接続して「show log」コマンド実施で表示
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/wlx-common/logging/show_log.html
ちなみに、ヤマハやSCSKでの障害解析の際にもreportファイルのご提供をお願いしています。クリックするだけで出力できて便利ですので、ぜひご活用ください。
3.DFSを回避するための選択肢
前章で紹介したログをご確認いただくと、Wi-Fiの不調の原因がDFSだった!というケースもあると思います。そんなときのDFS回避策としてまず真っ先に上がるのは、W52だけでチャンネル設計し、DFSが発生するW53、W56を利用しないという策です。そもそもDFSの影響がないチャンネルだけを利用するなら安心ですね。しかし、家庭用のWi-Fiルーターをはじめ、多くの無線LAN機器は初期設定でW52を優先して使用するようになっていますし、DFSの回避策としてW52のみを利用する設計は多くあります。もともと電波干渉が弱点の無線LANで皆がW52ばかりを利用すると大変混雑してしまい、時間によっては「ネットワークに接続できない」「通信がとても遅い」等の障害が発生してしまいます。それではDFSの回避策としては元も子もないという場合も…そんな時に活躍するのが、「Fast DFS機能」なのです。
4.Fast DFS機能搭載のヤマハAPはこれだ!
ヤマハ 無線LANアクセスポイント WLX413・WLX313の共通の特徴はトライバンド(2.4GHz、5GHz(1)、5GHz(2))であることです。Fast DFS機能は2つある5GHzを活用します。一方の5GHz帯の無線モジュールでチャンネルのスキャンを常に行うことでレーダー波に干渉しないチャンネルを把握しておき、使用中のもう一方の5GHz帯でレーダー波を検出した際にすぐにチャンネルを変更することができるという機能です。DFSが発生する可能性があるW53/W56のチャンネルを使用していても、60秒間通信が切断されることなくチャンネルが変更されるため、安心して使い続けることができます。
対応機種である、WLX413・WLX313それぞれの技術資料にて動作の詳細を解説していますので、チェックしてみてください。
5.5GHz帯を賢く使って快適なWi-Fi環境を!
そもそも、5GHz帯は「1.DFSとは何か」で紹介した表のとおり、W52が4チャンネル、W53が4チャンネル、W56が12チャンネルとW53/W56の方が広くなっています。一方で、初期設定のままやDFSを避けるためにW52のみで運用されている方が多いのが現状です。今回ご紹介したFast DFS機能を使えばDFSによる通信断を避けられるだけでなく、比較的空いているW53/W56を安心して使えるので干渉のリスクも下がります。それだけでWi-Fi環境が改善する可能性があります。ぜひヤマハのトライバンド対応の無線LANアクセスポイント WLX413・WLX313でより快適なWi-Fi環境の構築をお試しください!
Special Thanks
ヤマハ株式会社 秦 佑輔
SCSK株式会社 直田 幸士