シオラボのネットワーク技術コラム第15回 「OSI基本参照モデル(1)」

シオラボのネットワーク技術コラム第15回 「OSI基本参照モデル(1)」

2020.11.30

1. はじめに

前回の「シオラボのネットワーク技術コラム」より、ネットワークの基礎知識について解説しています。前回は、「プロトコル」と「ネットワークアーキテクチャ」について取り上げました。「プロトコル」は、ネットワーク通信において共通言語のような役割を果たしており、非常に重要な概念でしたね。また、「ネットワークアーキテクチャ」は、いくつかのプロトコルを体系的にまとめたもので、代表的なネットワークアーキテクチャにはTCP/IPがありましたね。

さて、昨今は、特定のメーカーや端末、ソフトウェアに依存することなく、柔軟にネットワーク通信をおこなえるようになっています。これは、汎用的でオープンな通信モデルとして1984年に策定された「OSI基本参照モデル」があったからと言えるでしょう。今回は、この「OSI基本参照モデル」について解説していくことにしましょう。

2. OSI基本参照モデル

「OSI基本参照モデル」と言えば、情報処理試験でおなじみかもしれません。データリンク層やネットワーク層といった階層は目にしたことがある人も多いでしょう。

OSI基本参照モデルは、通信機能を7つの階層構造に分割し、それぞれの階層で担うネットワーク通信機能を定義した概念モデルです。「通信プロトコルに必要な機能」という点でモデル化されているもので、特定の問題解決を図るためのモデルではありません。つまり、一般論としてコンピュータが持つべきネットワーク通信のモデルとして定義されているということではなく、すべてのネットワーク通信がこのモデルに従って実装されているということでもありません。しかし、このモデルに従って実装することで、異なるメーカーや端末同士でも柔軟にネットワーク通信をおこなえるようになる、重要な概念の一つです。

OSI基本参照モデルは、7つの階層構造に分割され、それぞれ次のような役割を担っています。

①物理層(レイヤ1)

コンピュータ同士の物理的な接続のほか、伝送媒体上の電気的、機械的なインターフェースについて定めています。例えば、物理インターフェースのピンやコネクタの大きさや形状、伝送経路におけるビットの電気信号への変換方法などを定めています。物理層は、OSI基本参照モデルの最下層であり、その上位層からの要求を満たすような物理的な存在を要求します。当然のことながら、この物理的な制約を超えてのネットワーク通信はできません。

②データリンク層(レイヤ2)

コンピュータなどの端末やネットワーク機器が物理的に直接接続されているネットワークのかたまりをデータリンクと言いますが、そのデータリンクにおいて、通信相手の機器に正しくデータ転送をおこなうための仕組みを定めています。誤りのないデータ転送をおこなうために、通信相手の識別や認識、データの分割や復元、伝送路上での衝突の検知や回避、誤り回復の手順などの機能が定められています。上位のネットワーク層からのサービス要求に応え、下位の物理層に対してサービスを要求します。

③ネットワーク層(レイヤ3)

物理的に接続されたデータリンクの間での相互通信の仕組みを定めています。ちなみに、データリンク内のネットワークは同一のネットワークと呼ばれ、データリンクを超えるネットワークは異なるネットワークと呼ばれますが、ネットワーク層は、異なるネットワークにおける仕組みを定めたものです。起点から終点までのパケット配送に対する責任を持ち、目的とする相手までデータを転送するために必要となる伝送経路の選択や、データの転送機能や中継機能などを持ちます。

④トランスポート層(レイヤ4)

目的とする相手まで確実に効率よくデータを届けるように、通信品質のばらつきを補完し、信頼度の高いデータ転送を実現するための機能を持ちます。コネクションの確立や切断、データの順序制御、データ紛失に対する誤り検出と回復、再送制御、データの多重化、フロー制御などを定めています。

⑤セッション層(レイヤ5)

トランスポート層以下によって効率のよいデータ転送が可能になっているものの、それを意味のある通信にするためには、データの送受信を秩序ある仕組みとする必要があります。そのために、アプリケーションプロセスにおけるセッションの確立、維持、終了、同一性の維持などについて定めています。

⑥プレゼンテーション層(レイヤ6)

転送されたデータを正しく処理できるように、アプリケーションが扱うデータの表現形式について定めています。例えば、データのファイル形式やデータ圧縮の方法、暗号化、文字コード体系などの機能を持ちます。

⑦アプリケーション層(レイヤ7)

アプリケーションプロセスがデータ通信をおこなうための具体的な機能や通信手順、データ形式など、アプリケーションごとに固有の規定を定めています。ネットワーク通信をおこなうアプリケーションが相互にデータをやり取りする場合に必要となる共通のデータ構造などについて定められます。

今回は、「OSI基本参照モデル」における7つの階層について、それぞれの役割を説明しました。次回は、さらに、これらの階層に対応するプロトコルやネットワーク機器について説明していくことにします。次回もぜひお楽しみに。

小澤 昌樹

著者

小澤 昌樹

株式会社シオラボ 代表取締役

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