シオラボのネットワーク技術コラム第17回 「OSI基本参照モデル(3)」

シオラボのネットワーク技術コラム第17回 「OSI基本参照モデル(3)」

2021.02.10

1. はじめに

前回の「シオラボのネットワーク技術コラム」では、「OSI基本参照モデル」における7つの階層のうち、下層にある物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層について、対応するプロトコルやネットワーク機器を説明しました。今回は、残りの3階層についてです。セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層とプロトコルについて説明することにしましょう。

2. OSI基本参照モデルにおける階層

まず、OSI基本参照モデルの階層について、前回の続きの⑤セッション層から説明していくことにしましょう。

⑤セッション層(レイヤ5)

セッション層では、ネットワーク通信をおこなっているアプリケーション同士のセッションを管理しています。そもそもセッションとは、コネクションの確立、維持、終了といった通信の一連の手順のことで、セッションが存在しないと、アプリケーションでデータを通信可能とする状態にはなりえません。つまり、データの送受信を秩序あるものとするために存在しているのがセッション層です。

現在のインターネットにおいては、このセッション層に準拠したプロトコルはほとんど消滅してしまったため、実際に使用される場面はほとんどなくなっています。また、アプリケーションが独自のセッション管理機能を実装することが一般的になっているので、TCP/IPモデル(DARPAモデル)においては、セッション層は存在していません。なお、このDARPAモデルについては、次回以降で詳しく説明することにします。

⑥プレゼンテーション層(レイヤ6)

プレゼンテーション層は、ネットワーク通信をおこなっているコンピュータ同士の異なるデータ形式の違いを補正する役割を担います。異なる文字コードを使用していると文字化けを起こしてしまいますので、このようなことが起きないように、文字コード体系などが規定されています。また、文字データに限らず、画像データや音声データにおけるファイル形式やデータ圧縮の方法や、セキュリティを向上させるための暗号化や復号化の処理についてもプレゼンテーション層が担っています。

⑦アプリケーション層(レイヤ7)

アプリケーション層は、実際にユーザーが利用するアプリケーションにおいてネットワークサービスを提供する層です。アプリケーションが提供する機能について、使用や通信手順、データ形式などを定めています。

3. OSI基本参照モデルの上位層とプロトコル

上位層であるセッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層は密接に連携していると考えた方がよく、次回説明するDARPAモデルでも、アプリケーション層という一つの層に当てはめることができるため、ここではOSI基本参照モデルの上位層に対応するプロトコルという考え方をしたいと思います。ここに紹介するプロトコルはおなじみのものばかりでしょう。

(1) HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)

Webサーバとクライアントの間でのデータの送受信を行うことに用いられるプロトコルです。Webページを構成するHTMLのほか、画像やスクリプト、スタイルシートなどのファイルもメタ情報を含めてやり取りすることができます。

(2) SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)

電子メールを送信するために用いるプロトコルです。メールソフトからメールサーバーへの送信に使用します。

(3) POP3(Post Office Protocol)

電子メールを受信するために用いるプロトコルです。メールサーバーからメールソフトへの受信に使用します。POP3の3はバージョン3の意味です。基本的にすべてのメールを一括で受信し、受信後はメールサーバーからメールを削除します。

(4) IMAP(Internet Message Access Protocol)

メールサーバーから電子メールを受信したり、メールサーバーにあるメールを操作したりするプロトコルです。基本的にはメールがメールサーバーに残ります。

(5) FTP(File Transfer Protocol)

ファイル転送に用いるプロトコルです。FTPサーバーとFTPクライアントの間でファイル転送を行ないます。HTTPよりも効率的な転送が可能ですが、セキュアなプロトコルとして設計されていないため、利用には注意が必要です。

(6) TELNET(Teletype Network)

遠隔地にあるサーバーを操作するプロトコルです。TELNETサーバーにTELNETクライアントから接続し、コマンドを入力します。認証も含め、すべての通信を暗号化せずに平文のまま送信するので、このプロトコルも利用には注意が必要です。

(7) DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)

ホストに設定情報を伝えるための仕組みで、接続するコンピュータにIPアドレスを割り当てることに使います。

(8) NTP(Network Time Protocol)

機器の時刻同期に用いるプロトコルです。NTPサーバーから時刻を受け取ったNTPクライアントがコンピュータの時計を合わせます。

今回は、「OSI基本参照モデル」の上位層であるセッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層とプロトコルについて説明してきました。

さて、これまで見てきたように、OSI基本参照モデルは、「通信プロトコルに必要な機能」という点でモデル化された概念モデルです。インターネットが広く普及していくなかで、TCP/IPが事実上の標準プロトコルとして利用されるようになると、「インターネットの持つべき通信機能をコンピュータに実装するにはどのようにしたらよいか」という点で、特定の問題解決を図るモデルが必要になりました。そうして考えられていったモデルが、TCP/IPモデル(DARPAモデル)です。次回は、このTCP/IPモデル(DARPAモデル)について説明していくことにしましょう。次回もぜひお楽しみに。

小澤 昌樹

著者

小澤 昌樹

株式会社シオラボ 代表取締役

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