河野哲治のコラム「PoE給電機器選定のベストプラクティスを考える」

河野哲治のコラム「PoE給電機器選定のベストプラクティスを考える」

2020.03.18

みなさんこんにちは、テックデザインの河野です。

2019年12月にSWX2210Pシリーズが発売され、インテリジェントL2スイッチ SWX2310系、スマートL2スイッチ SWX2210系、シンプルL2スイッチ SWX2100系の全ラインでPoEスイッチが揃いました。最近は無線アクセスポイントやネットワークカメラの設置の設置依頼が増えているので、PoE給電機器の選定には機能と利便性と予算の間でいつも頭を悩ませています。

ヤマハネットワーク製品のウェブサイトからダウンロードできる「ネットワーク機器総合カタログ 2019」のP21〜P22には必要な機能から製品を選択できるフローチャートが掲載されていますが、2019年10月に作成されたカタログなので残念ながらSWX2210Pシリーズが掲載されていません。そこで今回はSWX2210PだけでなくPoEインジェクター YPS-PoE-ATも含めた全てのPoE給電製品について、現場視点で機能と費用の両方を考慮した機器選択のベストプラクティスを考えてみたいと思います。

参考:カタログダウンロード
https://network.yamaha.com/support/download/catalog

PoE給電機器の機能比較

機器選定の基準となりそうな機能を独断と偏見でピックアップしてまとめたのが下記の表になります。
SWX2200系、SWX2300系のPoEスイッチは第2世代のSWX2210P、SWX2310Pに移行していますが、SWX2100は第1世代が現役です。

少し話が脱線しますが、表を眺めていると第2世代のSWX2110Pに相当するモデルがリリースされたら「動作環境温度 0〜50℃、PoE給電ポート数は据え置き」になるのではないかなと思います。やむを得ずPoEスイッチを密閉空間に設置しなければならないシーンは割とあるので、SWX2100-PoEシリーズの50℃対応は個人的に待ち望んでいるアップデートのひとつです。

YPS-PoE -ATSWX2100-PoESWX2210PSWX2310P
動作環境温度0〜50℃0〜40℃0〜50℃0〜50℃
PoE給電ポート数14 / 98 / 16 / 248 / 16 / 24
給電のON/OFF×
VLAN××
LAG××
ACL××
スタティックルーティング×××
LANマップLight×××
10Gbps対応×××
スタック×××

△:SWX2310P-28GTのみ対応

PoE給電ポート単価

各機器の希望小売価格をPoE給電可能ポート数で割った、PoE給電ポート単価が下記となります。表中の希望小売価格は3月1日に行われた価格改定後の価格です。
多ポートモデルになるほどPoE給電ポート単価は下がり、なかでもSWX2100-10PoEのポート単価の安さが際立っています。希望小売価格を仕入価格にするとリアルなポート単価になりますね。

希望小売価格PoE給電ポート数PoE給電ポート単価
YPS-PoE-AT15,800円115,800円/ポート
SWX2100-5PoE35,000円48,750円/ポート
SWX2100-10PoE49,000円95,444円/ポート
SWX2210P-10G79,800円89,975円/ポート
SWX2210P-18G119,800円167,488円/ポート
SWX2210P-28G159,800円246,658円/ポート
SWX2310P-10G112,000円814,000円/ポート
SWX2310P-18G172,000円1610,750円/ポート
SWX2310P-28GT219,000円249,125円/ポート

参考:スイッチ製品 価格改定のご案内
https://network.yamaha.com/news/news_nw_20200227_03

PoEインジェクターの使いどころ

PoE給電機器の選定で最初に悩むのは「インジェクターにすべきか、PoEスイッチにすべきか」だと思います。インジェクターにはPoEスイッチのような付加機能がないことを考慮すると、選択すべきシーンはスイッチよりも費用面で優れている場合に限られ、具体的には、

  • 遠隔で給電ON/OFFをする必要がなく
  • 同一セグメントの必要PoE給電ポート数が2ポート以下

のケースになります。

同一セグメントのPoE給電ポート数が3ポート以上になる場合は、YPS-PoE-ATを3台用意するよりもSWX2100-PoEシリーズを選択した方が1万円以上安価になり、LANマップまたはLANマップLightが利用できる環境であれば遠隔で給電ON/OFFもできるようになるので良いことずくめです。ただし、スイッチのアップリンクがボトルネックにならないことが条件となります。

ひとつの目安として、PoEインジェクターが3台になった時がPoEスイッチの利用を比較検討するタイミングとして良さそうです。

ヤマハPoE給電機器選択フローチャート 2020年3月版

ここまでの内容をふまえて作成した機器選択フローチャートが下図になります。

  • 情報盤など密閉空間に設置する
    50℃対応していないSWX2100-PoEシリーズを使わないようにしています。
  • VLAN間のトラフィックが多い
    スタティックルーティングに対応したSWX2310Pを使うことで、スイッチ↔ルーター間のリンクがボトルネックになりにくくしています。

フローチャートには盛り込めなかったのですが、多ポートスイッチの場合はアップリンクがボトルネックにならないように注意する必要があります。例えばSWX2210P-18G 1台に無線アクセスポイントを16台収容してクライアント端末がインターネット接続をするような環境だと、LAGで17-18番ポートを束ねてもアップリンク2Gbpsではボトルネックになってしまう可能性が高いため、SWX2210P-10G 2台に分けて収容したり、SWX2210P-28GTにしてLAGで8ポート束ねて使うなどの工夫が必要になります。

フローチャートを作ったらロジカルに機器選定ができるようになったので、今後私は今までのように悩まずに済みそうです。また、「なぜその機器を選択したのか」も明確になるので、稟議やお客様への説明や説得がしやすくなるかと思います。本稿がみなさんの業務の一助になれば幸いです。

河野 哲治
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河野 哲治

株式会社テックデザイン 代表取締役

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