みなさんこんにちは、テックデザインの河野です。
7月1日に発売された無線アクセスポイント「WLX212」はもう触りましたか?
私は7月中に1台納品する機会があったのですが、小規模なオフィスで非常に使いやすいことを現場で実感してすっかり好きになってしまいました。卓上設置のおさまりも良く、リモートワークで自宅に無線アクセスポイントが必要になった個人や家庭にも魅力的な製品だと思います。
WLX212を実際にあれこれ触ってみたところ、新しく採用された「仮想コントローラー」の挙動が興味深かったので、今回は仮想コントローラー関する所感を中心に述べたいと思います。
スタートアップガイドには必ず目を通そう
仮想コントローラーが採用されたことでWLX212は従来のヤマハ無線アクセスポイントとはIPアドレスの設定方法が少し異なっています。WLX212のセットアップを初めて行う際はスタートアップガイドにひととおり目を通すことを強くおすすめします。
私はスタートアップガイドを確認せずにセットアップを始めてしまった結果、仮想コントローラーのIPアドレス設定で少しハマってしまいました。WLX212もヤマハネットワーク機器の例に漏れず非常に充実したドキュメントが用意されていますので、
- スタートアップガイドに沿ってセットアップ
- 技術資料を参照して各機能の設定を追い込む
- 必要に応じてコマンドリファレンスを参照
という流れで作業を行うとスムーズにセットアップができると思います。
WLX212 スタートアップガイド
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/wlx212/startup/index.html
WLX212 技術資料
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/AP/docs/wlx212/index.html
WLX212 コマンドリファレンス
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/wlx212/index.html
「仮想コントローラー」「クラスター」とは?
WLX212の「仮想コントローラー」は従来機種(WLX313 / WLX402 / WLX202 / WLX302)のController-APに相当し、「クラスター」はグループに相当します。
これまでは特定のAP1台がController-APとしてMember-APを管理していましたが、WLX212ではクラスター内の1台がマスターAPとなり仮想コントローラーを立ち上げ、仮想コントローラーからメンバーAPを管理します。コントローラーが仮想化して特定の1台に依存しなくなったことで、クラスターの台数が増えるほどコントローラーのバックアップが増え、耐障害性が向上するという新しい強みを獲得しています。
仮想コントローラーとAP本体には異なるIPアドレスが必要
VRRPと同様に仮想コントローラーとAP本体にそれぞれIPアドレスを設定する必要があるため、クラスター全体では「設置台数+1個」のIPアドレスが必要になります。下図のように5台で運用する場合はAP本体に5つ、仮想コントローラーに1つ、合計6つのIPアドレスが必要になります。

無線アクセスポイント版VRRP?
従来機種でController-APが故障などで使用できなくなった場合は、代替Controller-APを手動でController-APに昇格させることで一括管理環境を維持していました。WLX212では仮想コントローラーを立ち上げているマスターAPが故障などで使用できなくなった場合、クラスター内で稼働時間が最も長いAPがマスターAPに昇格して仮想コントローラーを自動的に立ち上げるため、手動による昇格作業と代替Controller-APの設定が不要になっています。

この仮想コントローラーとクラスターの挙動はVRRPによく似ていて、WLX212では「無線アクセスポイント版VRRP」のような仕組みが動いている、と考えるとネットワークエンジニアの方は理解がしやすいと思います。技術資料にある「Master/Slave」や「広告パケット」などの用語からもVRRPの影響を感じますね。
VRRP用語との対比
- 仮想ルーター ↔ 仮想コントローラー
- VRRPグループ ↔ クラスター
- マスタールーター ↔ マスターAP
- バックアップルーター ↔ スレーブAP
- VRRP広告 ↔ 広告パケット
WLX212技術資料 クラスター管理機能
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/AP/docs/wlx212/cluster.html
仮想コントローラーとAP本体を同じIPアドレスにしてしまうと…
VRRPでは仮想ルーターと物理ルーターに同じIPアドレスを設定することができますが、仮想コントローラーとAP本体には異なるIPアドレスを設定する必要があります。仮想コントローラーにAP本体と同じIPアドレスを設定してしまうとError 500 (Internal Server Error)となり、AP本体と仮想コントローラー両方のGUIから閉め出されてしまいます。

誤って同じIPアドレスに設定してしまった場合は、初期化もしくはシリアルコンソールから下記の設定を行うことでリカバリーが可能です。
# 仮想コントローラーのIPアドレスをAP本体と異なるIPアドレスに設定
# cluster virtual-ip address 192.168.XX.XX/24
# 不揮発メモリに設定を保存
# save
# メンバーAPに設定情報を送信
# wlan-controller config set
WLX212のシリアルコンソールのデフォルト文字コードはUTF-8になっているようです。機器情報の設置場所に入力した日本語の文字列がSJISでは文字化けしましたが、UTF-8では正しく表示されました。
GUIから仮想コントローラーとAP本体に同じIPアドレスを設定した場合は、エラーを出して設定変更を受け付けないようになるとありがたいですね。今後のファームアップで実装されることを期待したいと思います。
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